山田宏一「増村保造監督『妻は告白する』をVHSで見る」

http://channel.slowtrain.org/movie/column-eigasi/009/eigasi0905.html

 雨の夕方、びしょ濡れの和服姿の妖しくも美しい若尾文子が愛する男(川口浩)に会いに会社までやってくる――そして愛のために死ぬ――すさまじい、「呼吸のつまるほどなまなましい“女”を実感」させるラストシーンである。このラストシーンのあまりの鮮烈さに、映画の他の部分――タイトル前のシーン(アバンタイトル)からはじまることとか、裁判劇のプロットとか、古めかしいほど律儀にオーソドックスな回想形式を使った話法とか、物語の発端になる登山のシーンとか、そういったすべて ―― をすっかり忘れ去ってしまうほどだ

自分が全く鑑賞したことのないものは取り上げにくいので、ここでは紹介しなかったけど、新文芸坐での増村レトロスペクティブが大盛況のうちに昨日で終了(客層は年配9割に若い人1割と言う感じだった)。火曜日以降の番組を観た上で言うと『妻は告白する』が一番、印象に残った。多分、「傑作」ということで一本挙げると『清作の妻』になるだろうけど。
『卍』と『痴人の愛』は谷崎の小説が好きな人も非常に納得が出来て面白い作品(前者の岸田今日子、後者の小沢昭一の共演者の演技も光る)なのでオススメ。『刺青』は恥ずかしながら原作が未読なんで判断不能。でも山本学が良い味。

関連:http://kadokawa-pictures.com/masumura/