日本における80年代と90年代の違い

ということでは、私の場合、経済的観点からばかり考えていて、例えば「80年代はスカだ」というのは90年代になって80年代に生産されたものが「売れなくなった」からだということに過ぎないという気もする。
音楽に関しては決してスカだったとは言えないと思ってますし、例えば小説だって、確かに80年代の特に後半になって、作品の質を落とした作家が多かったのは間違いにないにしても、それはあくまでの「それ以前に活躍した作家」を中心にした観点からの考察に過ぎないわけだ。
そこらへん個人的に読み落としもあるので、ボチボチと読んでみようと思ってますが。例えば既読のところで言うと、やっぱり金井美恵子の「目白もの」というのは(こういう言い方も何だけど)「上手い身の処し方」だったなあと思う。偽日記でhttp://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/yorinuki.a.s.p.html#Anchor588110

80年代を代表する「この一作(一冊)」というのなら、なにより『文章教室』ということになるんじゃないかと、ぼくは思うのだった

と書かれているのも頷ける(私が金井作品を読み出したのはこのへんからで、「天才少女」としての作品はその後遡って読んだ)。
ただ東浩紀が『柔らかい土をふんで、』について『皆殺し文芸時評

つまり最初に骨格の文章があって、そこにいろんな要素を足して作られた文章の感じがするんですよね。ここには視点の連続的移動はないんですね。ですからその足されたところの文章を読んでいる時には、その足しているところがある要素があって、次の要素に移動してってなんないんですよ。

と書いていることにも頷ける。本作のもとになっている短編の連作が雑誌に掲載されたころに少し読んで、金井作品への興味がとぎれてしまったという個人的経緯もあり。
まあ、日本文学全般に対する興味の減退というのも大きいかもしれず、このへんは、きちんと「書かれたもの」のレベルで考えなきゃいけないと思うけど。