中上健次『熊野集 火まつり』(小学館文庫)読書中

先に途中までで挫折していた『熊野集』の方を。
物語と私小説が交錯する異色連作短編集…ということになるんだけど、最初の「不死」が「物語」で次の「桜川」は一人称の私小説になる。私の知る限り、初期作品を除いて一人称が使われているのが、この作品集。
私小説に向かったのは大江の『「雨の木」を聴く女たち』収録の連作の影響があるかも、と思った。
「海神」で構想のみで終わった小説として書かれている

小説を書こうとする小説家の小説ではなく、綿密なテキストの校訂と注釈をやる評論家の小説で、テキストはこの世にまったく存在しない架空の武勲詩だった。

というのはナボコフの『青白い炎』(現在、積読中)に似てるなあ、「アスディワル武勲詩」を論じたレヴィ・ストロースにインスパイアされたと後段にあるけど。