島田雅彦「無限カノン」三部作についてのメモ

(内容に踏み込みますので御注意を)
多分、三島の「豊饒の海」四部作の影響があるんだろうなあ、と未読ながらに思っていたら、やっぱりそう言う人がいる。良い機会だから読んでみるかな。

基本的には蝶々夫人の末裔という設定のカヲルを主人公にしているのだけど、彼の話に終始する第二部『美しい魂』、第三部『エトロフの恋』よりもカヲルから遡って語られる歴史小説と恋愛小説のクロス・オヴァーのような第一部『彗星の住人』の時空を行き来する語りの構成が面白かった。
恋愛小説としての物語は、かなりあざとく、いかがわしい。
第一部と第二部はカヲルの娘、文緒にカヲルの義姉アンジュが物語るかたちで、二人称。第三部はカヲルの一人称に変化する。
第三部がこれで終わりでなければ、もう「ひとひねり」あるような気も。既に、時代設定としては未来になっているし、全体としてソフトな歴史改変SF的な設定でもある。
終わり方としては文緒と蝶々夫人をつなげて円環を閉じるようなかたちが常套手段のような気もするけど…果たして。