昨日今日のこと

項目別にするのが面倒なんで、ダラダラと。
まず買っておいた「ミステリマガジン」最新号の「ミステリアス・ウェスタン」特集の部分を読了。
ホック、ブラウン、スタージョン、レナード、マシスン、ランズデール、マキャモンと新旧のミステリ(周辺)作家の西部小説短編(&ショート・ショート)などがまとめて読めて面白い。
個人的にはスタージョンが注目だったんだけど、訳がいまひとつ馴染めず、奇妙な味がありそうなんだけど、細かいところが判り難い。ちょっと再読してみよう。ホック、ブラウンはオチのある話を西部小説の設定の中で書いたような感じで、この手のものが好きな人には楽しめる。レナードはぐっとウェスタン独自の話で、ランズデールとマキャモンは流石に現代的な作風。
という流れで、本特集の編者、尾之上浩司による石上三登志のインタビューで取り上げられているマックス・ブランドの『砂塵の町』(中公文庫)を積読の山から引っ張ってきて読了。
確かに[通俗的な意味で面白い]、充実したプロットで、女こどもの説話論的使い方も堂に入っている。まあ、道徳的なところも含めて、そのまま現代でやろうとすると古臭いだろうけど、復讐ものの一つのお手本ではあるんじゃないか。

更に、これもまた前記インタビューで触れられている『ラスト・サムライ』を丸の内ピカデリーで。9:15の初回だから大丈夫かと思ったら、やっぱり満員。最近の日本人の「時代劇好み」にもバッチリ当てはまってるからなあ。年配層も取り込めるし。
歴史公証等におかしいところはあるけど日本人が見ても大きな違和感はないし、サムライ、セップク、フジヤマ、ニンジャと西欧人だけじゃなくて現在に至っては日本人も刺激しちゃうようなジャポニズムオリエンタリズム
盛り込むというバランスの取り方で。

まあ、白人対アメリカ・インディアンという構図を価値観をずらしながら移植した裏構図も、[勘違いPC映画]http://www.saiin.net/~ogiso/200401.html#04_t1と言っても良いだろうと思うんですけど、まあ、この程度のPCでもあって悪いことはないかなあという気もする。特攻=カミカゼ自爆テロというのも微妙にあるだろうし。
そこらへんのことはhttp://www.cafeopal.com/reviews/03/dec/reviews031209.htmlのVol.2に詳しいです。

その点で、島田雅彦が本当の「勘違い」をしちゃってるらしいですな。http://blog.livedoor.jp/everythingcool/archives/2004-01.html#20040111
蓮実重彦が「インビテーション」1月号等で「トム・クルーズが好きだから」というエクスキューズをつけて、思いがけなく持ち上げているんだけど(そのうちhttp://www.mube.jp/menu_cr.htmlにアップされるでしょう)、実は裏に政治的意図がありそうな感じ(また島田氏は蓮実氏に添削を受けたらいかがかな)。

大体、石上氏は、この映画の集団アクションシーンを褒めてるんだけど、これは蓮実氏が『文学界』1月号での阿部和重との対談で言っているように、[何が何だかわからない]という評価が適当だと思う。
例えばジョン・カーペンターなんかと比べたら雲泥の差だと思うし。

ということで続いて、昼食の後に「最後の西部劇」とも呼ばれる『許されざる者』を撮ってしまったイーストウッドが監督専念で撮った『ミスティック・リバー』を。
ちょっと前の世代ならマカロニ方面から西部劇にアプローチしたりもできたんだろうけど、私などは映画を積極的に見始めるのが遅かったのもあって、「西部劇」を意識したのは『許されざる者』だったりする。

ちなみに途中でTVに映っている吸血鬼映画はカーペンターの『ヴァンパイア 最後の聖戦』。何で判るかというと、つい先日観たから(笑)。こちらも無駄ないアクション映画なんで興味のある方は是非。
こちらも満員でした。『ブラッド・ワーク』は単館上映だったというのに…。

中身は派手さを極限まで抑制した演出で最後まで持っていってしまうもの。
多分イーストウッドは、西部劇はもう撮らないつもりで『許されざる者』を作ったんだと思うんだけど、そこにあった「倫理」を貫くつもりで今も撮っているし、原作も選んでるんじゃないかと思う。そういう意味で、ちょっと食指の伸びない『マジソン郡の橋』も見ておこうと思う。

それからWilcoの新作製作の数奇な顛末を描いたドキュメント『ウィルコ・フィルム』のDVDもやっと購入して鑑賞。
これはWilcoのファンなら必見だし、アメリカ音楽業界の現状に興味のある人は見ておいた方が良いものだと思います。